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秘匿の闇市〜Midnight〜
第5章 禁じられた二人
「もし私がお父さんの言う通り明るくなったのだとしたら、彩月さんのお陰だわ」
「あさひを長期間連れ回して、親の代わりに謝りに、お前を送り届けてくれたさっきの子か……。泊まるんだろ?お義母さんが許可しているから、お父さんはどうにも言えないが……」
「どうして、そんな腑に落ちない顔をしてるの?」
「いや、……」
さっき初めて顔を合わせた時も、彩月と剛志の間には、奇妙な空気が漂った。
…──ある人を思い出す苗字だったから、つい。気分を悪くさせたならすまない。
それきり剛志は何も言わなかったが、彼は、おそらくあさひの世話係に良い感情を持っていない。
彩月の方も、わざわざ掘り下げていた。苗字が同じだけの赤の他人など、掃いて捨てるほどいるので、と。
「お父さんは、あさひに友達が出来て安心したよ。ただ、友達でも上手く付き合え。あさひももうこの歳だから、お父さんも大人として、お前に人生の先輩ヅラをする。友達だけじゃない。恋人でも、百パーセント信頼は出来ないんだ」
それは、きっとあさひの母親のことを指しているのだ。
あさひを産んで退院後、どこかの男の出て行った、立花陽音。
「ええ、分かったわ、お父さん」