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秘匿の闇市〜Midnight〜
第5章 禁じられた二人
「まだ逃げる気にならない、か」
「…………」
それが今の状況を指しているのではないと、にわかにあさひははっとした。
佳子の家政婦達は、彼女の客らに、金で身体を売っている。特にあさひの場合、客も選べなければ、あらゆる事柄における選択肢が与えられない。
処女を失くせば、あさひは本当に商品になる。
「彩月さんは、ずっと、佳子さんの側にいますか?」
あさひが彩月に求められる限界だ。
初めてのキスもセックスも、彼女が良かった。
キスは二度目の経験で、夢が叶った。あれがあさひの初めてだ。少なくともあさひから唇に触れたのは彩月が初めてで、彼女もそうだと言ってくれた。
育江は、あさひくらいの歳の頃から買春していた。結果、少なくとも志乃達が物心ついた頃には、労働も倹約も不要な生活を送っていたと聞いている。
片やあさひの父親は、特定の女を愛して、子供まで産ませて、今も会社の言いなりだ。いつも一人だ。
あさひも誰かを信じて頼れば、父のようになるのだろう。育江の言う、不幸で粗末な女になり下がるのだろう。
だのに恐れるほど、溢れ出す。
この感情は、まるで劣情、まるで尿意だ。弾けた風船を飛び散る紙吹雪のように、かき戻せさえしない。