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秘匿の闇市〜Midnight〜
第8章 愛され少女の教育法
* * * * * * *
クリスマスの翌週、あさひに宅配便が届いた。
美影の筆跡で宛名の書かれた封筒には、ヘッドドレスが入っていた。
「律儀というか……持って来てくれれば、お茶くらい出したのに」
「だね……」
一言添えられていたメモは、他にも返しそびれているものがあれば言ってくれという旨だけ記してあった。
佳子の館を出て半年以上が経つ。
心のどこかで、あさひは自由を望んでいた。だのに一度は諦めた日々を現実として過ごすほど、あさひの中の埋めようのない空洞は、広がっていく。
今振り返ると、彩月は何度か、あさひに逃げる道を示していた。それに見て見ぬ振りをしていたのは、あさひの意思だ。
「…………」
「今でも好き?」
「…………」
あさひは、ヘッドドレスを見つめていた。帰省の度に増える荷物を彩月に預けていたのが、昨日のこと同然に思い出せる。
「もっと器用に、上手に隠しておくべきだった」
「何で?」
「世間知らずで、すぐ人にヘコヘコして、自分で考えることも苦手で、頭も良くなくて、私に取り柄があったとしても、広い世界に出てしまえば、何の役にも立たないもん。彩月さんは完璧で、誰の前でも堂々としてて、叔母さんや理良さんみたいに自立した人だから、きっと私、気を悪くさせていただけ」
「それは考えすぎだよ。あさひは良い子。あんなに仲良かったじゃない」