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秘匿の闇市〜Midnight〜
第8章 愛され少女の教育法
「あさひの見落としてた。届けてくれない?」
「うわ、まだあったんだ、懐かしい。でもあさひちゃん、これくらい忘れてそう。気になるなら届けてあげれば良いと思うけど」
「気になるから頼んでる」
「自分で行きなよ」
「っ……」
「彩月!」
視界にモザイクがかかった途端、美影の腕に抱きかかえられるようにして、彩月は彼女にしがみついていた。
「悪い、寝不足」
「いい加減にしな」
佳子の寵愛を実感するための痛み。彼女の孤独を慰めるための痛み。
それらを貪ってきただけで、咎められることはしていない。
「彩月はあさひちゃんを選ぶと思ってた。結果、違ったけど、そこまでは文句言わないよ。小松原さんとは他人だったようなものだし、血縁って言ったって、遠めだし……」
「もっと濃くても好きになってたよ」
「眩暈、酷い?それか吐き気?」
「あさひじゃないんだし。……吐き気でも男は相手してないから。とにかくこれは返してきて」
「小松原さんに、外出を禁止されてるから?」
否定はしない。
ただ、そうでなくても、今更あさひと顔を合わせたところで、どうにもならない。
「髪も伸びてきたから、また切って。あと塗り薬、発送ついでに買ってきて」
「先輩をどこまでこき使う気だよ」
彩月は彼女に、今度こそあさひの名残りを押しつけた。大掃除の再開まで、まだ時間がある。部屋に戻って施錠した。
反省も後悔もしていない。
彩月は、ずっと今の美影の立場にいた。彼女以上に酷かった。