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秘匿の闇市〜Midnight〜
第8章 愛され少女の教育法
あれこれ言葉を選んでいるようにも見える志乃は、あさひにまだ何か隠しているかも知れない。
ただ、あさひは初めて反撥を決めた。
佳子の館では、人間としての尊厳も権利もなかった。
生きていながら生かされていただけのあさひは、それでも彩月にいだいた想いに、刷り込まれた意思はない。永遠に愛されなくても構わなかった。彼女の言葉がうわべだったとしても、あさひのそれは今でも変わらない。
「受験が終わるまで、なんて、待てません。ごめんなさい」
「あさひちゃん……」
志乃の話と佳子の気性を照らし合わせれば、二ヶ月待っては遅いかも知れない。
杞憂であれば良い。
ただ、佳子はあさひを道連れにして、彼女自身も壊れかけていた。
いや、佳子がどうなっていようと関係ない。あさひは、彩月に会いたい。会えない日々が重なるほど、これは禁断症状だ。
「やっと、あさひちゃんがやりたいこと言ってくれた」
「えっ……」
花の綻ぶような志乃の反応に、あさひは気の抜けたような声が出た。
「あさひちゃんがそこまではっきり言ってくるなんて、レアだなぁ。録音しておけば良かった。叔母さん嬉しいっ」
「あっ……わっ」
「この美貌で、しっかり口説き落としておいで。もし泣くことになったら、フォトジェニックで超高級なスイーツビュッフェに行って、私と発散しよう」
あさひを腕に収めた志乃の胸が、窒息の危機まで及ぼしてくる。隙間を見つけては呼吸を確保している内にも、それとは別に、あさひの動機は徐々に激しさを増す。
スイーツビュッフェに行く未来しか目に浮かばない。
だが泣きながら帰ってきたとしても、志乃がいる。