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秘匿の闇市〜Midnight〜
第8章 愛され少女の教育法
『あさひちゃん……?』
出たのは、志乃の佳子以上に掠れた声だ。
彩月はこんな時間に起こしたこと、あさひの件で偽ったことを詫びた。
『気にしないで。あさひちゃんは、無事でしょ。彩月ちゃんを好きな女子が、あさひちゃんに嫉妬でもして、意地悪した?』
「それより酷い状態で、帰すことになります。庇いきれなくて、弁解のしようもありません」
『了解。私はあさひちゃんが話してくれるまで、何も訊かない。迎えに行けば良い?』
「そうしてもらえると、助かります。住所は、◯◯町の館前の森に門があるので……」
彩月は手短に話を終えて、電話を切った。
「あさひ。着いたら、志乃さんが電話くれるって」
「え……」
愛されたいと渇望しながら、それを信じたことなどなかった。
見返りがなければ求めても無意味だと、また傷付くと、ずっと彩月は怯えていた。佳子は、同じ孤独の中にいた。小松原の血を引きながら、混血であるがゆえに排除されてきた彼女は、彩月に似ていた。愛などなくても、理解はし合えた。傷を舐め合って、慰めも出来た。
あさひは違った。
見返りを得られなくても恐怖するばかりか、痛みもかけがえないという。たった一人になったとしても、感情があればそれが愛だと。