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秘匿の闇市〜Midnight〜
第8章 愛され少女の教育法
「そんなこと言ったって、美影も好きな人が出来たら、こんなとこにいられないでしょう」
「そんな相手、見つかる当てもありません」
「嘘ばっかり」
「もし良縁に恵まれたら、小松原さんに紹介します。部屋も空いたことですし。一人くらい家族として迎えていただきたいと、願い出ます」
そんなことあり得ませんが、と、美影が再三、付け足した。
産み落とされた自身を呪った。何故、あらゆるものを失いながら生き続けねばならないのかと、佳子はいつでも悲観していた。
だが実際、終わらせようとしたことなどなかった。
失くしてばかりではなかったからだ。
「有り難う」
佳子の求める愛情は、案外、近くにあるかも知れない。
甘ったるくとろけるような間柄だけが、愛とは限らない。
佳子にとって、今はそれが美影だ。亜子や稲川、林達だ。
「美影に出逢った頃から、楽しいこともたくさんあったわ。これからも楽しませてくれると、期待してる」
ティースタンドを飾っていた焼き菓子は、花型のクッキー二つを残して底をついていた。
だが明日の午後になれば、きっとまた別の焼き菓子が並ぶ。
次はカップを二つ準備するよう美影に言っておこう、と佳子は決めた。
───fin.