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秘匿の闇市〜Midnight〜
第8章 愛され少女の教育法
「貴女に従順な使用人?それとも、恋人や家族ですか」
「…………」
「もし後者なら、私は恋人にはなれませんが、家族くらいの気持ちはあります。もちろん使用人ですが、何年も同じ屋根の下に暮らしていたら、友達くらい親しくも」
「美影……」
「亜子さんの離婚が成立した時だって、彼女はここを辞めても差し支えないくらい、生活資金や養育費は貯まっていました。でも、小松原さんと離れたくないという理由で、娘さんのために接客は辞めても、家政婦の仕事だけ続けています」
「…………」
そして、圭やたまきも、大学を卒業してここを辞めても、たまに顔を出してくる。無償で佳子の昼ご飯を作ったり、正月には着付けをせがんで、新人の家政婦達が休憩時間を延ばせるよう家事を代わってやったりしている。
佳子は、対等に親しみ合える相手を求めていたのか──?
「…………」
愛されたかった。肉親の愛情を得られず、政略結婚の相手には、玩具としての扱いを受けた。結果、人間に触れられることを極度に恐れるようになって、愛に渇いても愛を確かめ合う行為が壊滅的に出来なくなった。彩月が例外だったのは、彼女が佳子の血縁だったからというのも大きかったのかも知れない。