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秘匿の闇市〜Midnight〜
第1章 愛玩少女の製造法
* * * * * * *
十一年前、あさひが物心ついた頃、それこそ祖母は、祖母と呼ぶのも腑に落ちないほど、もぎたての果実そのものだった。母がそうだったようだから、直系の育江が美しいのにも納得がいく。
もっとも、あさひの生みの親である立花陽音(たちばなはるね)に関する話を、育江自身が出すのは稀だ。
陽音の話題を出すのは大抵、あさひの叔母の立花志乃か、実父の日尾剛史(ひおつよし)だ。
志乃は婿養子の男と共に、あさひと育江と同じ屋根の下に暮らしていて、夫婦ともに姪に良くしてくれている。あさひを産んですぐに行方をくらませたという立花陽音は、育江に言わせれば薄情者だが、志乃にとっては慕っていた姉だったらしい。
ただし、志乃と良人は、一年の内の半分以上は出張で地方へ出かけている。そのため、実質あさひは、育江と二人暮らしのようなものだ。
育江は孫の教育に熱心だった。志乃が既に独り立ちしているのもあって、彼女の熱意はもっぱらあさひに向いていた。
「良いかい、あさひ。女の値打ちは、いかに愛されるかだよ。そのためには、まず美しくならなければいけない。気持ちや振る舞いは年頃になってから学ぶとして、器量はお前くらいの歳から積み重ねていくものなの」