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蝶の標本〜もうひとつのトパーズ〜
第3章 深まる愛と疑惑
帰国して少し経ってから、
和仁さんに妊娠したことを伝えた。

物凄く喜んでくれて、
お互いの両親や祖父母を招いての食事会の席を設けて、
報告した。

周りが過保護なほど気遣ってくれる中、
臨月を迎えた。

逆子のままだったことや、
とにかくリスクを回避することだけを優先されるように、
帝王切開での出産にすることになってしまった。


お腹に傷が出来ることがどうしても嫌で、
かなり抵抗したけど、
父と祖父が、
「とにかく、一番安心安全なことを優先する」と言って引かなかった。

私は和仁さんにも泣きついた。
帝王切開するくらいなら、
死んだ方がましよ?と、ヒステリックに喚いたり、
叩いたりもした。

和仁さんも父達と同じ考えだったけど、
心が不安定で、切迫流産などしては…と説得してくれて、
自然分娩することに変更してもらえた。


そして、生まれたのが、
岳人さんだった。


目鼻立ちがはっきりしていて、
まつ毛も長くてカールしていて、
髪の色も瞳の色も淡くて天使のようだった。
とにかく愛らしい。


「なんて可愛いのかしら?
しかも男の子よ?
嬉しい。
幸せだわ」と、
初めて赤ちゃんと対面して、
私は涙を流して喜んだ。


名前については、
男の子のと女の子のを、
生まれる前にあらかじめ2人で決めていた。


でも…
和仁さんは少し浮かない顔をしていた。


「和仁さん、どうしたの?
女の子の方が良かったかしら?
でも、そればかりはコントロール出来ないもの」


私は嬉しくて、
周りの様子など気にしてなかった。

勿論、和仁さんのことも…。
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