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蝶の標本〜もうひとつのトパーズ〜
第6章 安息の地
父とは時々、会って話はしていた。

大抵、病院の父の部屋でだった。

母は相変わらず、
僕のことは幼稚園に行っていると思い込んでいるようで、
「今日もお泊まり会なの?
いつ帰るのかしら?」と言いながら、
穏やかに過ごしているとのことだった。

無口な父にしては珍しく、
「お母さんとはまるで新婚のように仲良くしているよ。
毎晩愛し合っている。
何もしてやれなかった分を取り戻せると良いんだが…」と言いながらも、少し顔を紅くしていた。


「あの女の子は、少しは落ち着いたのか?」と麻衣子さんのことも気遣ってくれる。

僕は頷いた。


「進路はどうするんだ?」と言われて、
いつもと同じことを言う。


「家から離れたいから、
遠くの医学部を受けるつもり。
なるべくお金掛からない国公立にするよ。
麻衣子さんも医学部受験するって言ってる」


「首都圏でも私立でも良いんだぞ。
どうせ、お母さんのお金だよ?
僕は雇われの病院長だからな?」と笑う父は、
前ほど辛そうな顔をしていなかった。


「僕…お父さんの子供だったら良かったのに…。
ごめんなさい」


「何を言ってるんだ?
岳人は僕とお母さんの子供だよ?」


「ミケーレって言うヒトが、
本当の父親なんでしょ?」


「違うよ?
僕が父親だ。
僕はね、お見合いだったけど、
会った時からお母さんのことが大好きだったし、
今でもそうだよ。
でも、満足させてあげられなかった。
ちゃんと愛してるとか、言葉にも態度にも出せなかったから、
不安にさせてたんだよ。
おまけに、僕には子種もなかったんだ。
だから…。
人工授精みたいなもんだよ」と目に涙を浮かべながら優しく言った。


「岳人は僕に似て、口下手だから、
ちゃんとあの女の子に…
好きだったら好きだってことをたくさん言わないとダメだよ?
言わないと伝わらないし、
態度にも示さないと不安にさせる。
強姦されたことも、
事故みたいなものだから、
包み込んであげて…」


「麻衣子さんは黒田先生のことが好きだから…」


「まあ、まだ若いから、
また状況も変わるだろう?」と父は笑った。


その時は、本当に状況が変わるなんて思わなかった。
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