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虐げられた新妻~秘密の書斎~
第1章 求愛
都内では、桜が開花して、
すっかり春の陽気となっていた。
日中はスプリングコートを身につけると
じっとりと汗ばむぐらいであった。
その日、東美代子は久しぶりの
日曜休日だったので、
かねてからお付き合いをさせていただいている
向田有人の家にお邪魔していた。
「美代子、今夜はゆっくりしていけるんだろ?」
有人が帰りは送ってゆくから
もっとゆっくりしてゆけと催促していた。
「そうよ、久しぶりに三人が揃ったんだから
ゆっくりしていってよ」
有人の妹で
都内の大学に通うために
兄である有人の部屋で居候している愛弓が
デザートのケーキを
ケーキ皿に取り分けながら
同じように美代子を引き留めた。
「そう言ってくれるのは嬉しいんだけれど
明日は本社で新入社員研修の応援をしなきゃいけないの。だから、今夜は早めに帰って明日の準備をしなきゃダメなのよ」
美代子がそう言うと、有人も妹の愛弓も
これ以上ない落胆の表情を浮かべた。
重苦しい空気が室内に流れたので、
美代子は話題を変えて
「それはそうと、愛弓ちゃんは内定を頂いたの?」
と愛弓に話を振った。
「まだ、もう一年あるし…」
その一言で、どこからも内定を頂いていないのがわかった。