この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
自分であるために~涙の雨と晴天の虹~
第3章 黒い想い出と愛情
「お久しぶりです。ごめんなさい。学校始まって、最近、忙しくて」
「いいの、いいの。むしろ、今まで付き合ってくれててありがとう。でも良かった! 心愛ちゃんに紹介したくて! 薫(かおる)。俺の大切な人!」
「大切な人って……?」
「俺の付き合ってる人。彼女!」
京さんは、今まで見たことないような優しい笑顔で。楽しそうにニコニコと笑って、嬉しそうに言った。
頭が真っ白になる。恋愛対象は女性だったのか……。彼女、いたんだ。彼女がいたのに私に優しくしていたんだ。いや、京さんがしていたのは普通の行為で、私が勝手に都合よく捉えて……。ううん、ネガティブに考えていたけれど……。
ぶわぁああぁっと説明できないほどの色々な感情が押し上げてきて……。でも一番は、
──帰りたい。
今すぐ帰りたい。この場を一刻も早く離れたい。
零れ落ちそうな涙を堪えて、美紅さんのワンピースの裾を引っ張った。
「そうなんですね、お幸せに……」
京さんの顔を見れないから、美紅さんの方を向いて、精一杯の声を作って言う。震えそうな声を抑えるのに、それだけに全神経を向ける。
「京、薫、ごめんねー! これから私の家で、ミキも入れて、お泊まり女子会する予定なのー! ミキが予定より早くついたみたいだから、そろそろあたし達、出るねー! あとは、ごゆっくりー」
美紅さんは、私の意図を理解してくれた。お泊まり会は2人っきりだったけれど、ミキさんの名前を出したのは、余計な誤解をうまないようにだろう。とても優しい人だ。
「何だよ、それー! あたしらも混ざろうかなー」
「それは遠慮しとくー! またねー!」
京さんは、私の態度に気づくことなく、笑っている。
私は、2人に軽くお辞儀をして、美紅さんと店を後にした。