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空の記憶~あなたと私と彼、それから~
第8章 第三話【波の音】 予感
その時、幸の背中に鋭い痛みが走った。
先刻、馬車が突然止まった衝撃で椅子の背にぶつけた際、打ち身でもしたのかもしれない。思わず顔をしかめた幸を見て、実直な御者は慌てた。
「奥さま、大丈夫でございますか。どこかお怪我でも?」
幸は痛みをこらえつつ、首を振った。
「私のことは良いのです。それよりも、早くに馬車が動くようにしなければなりません。こんな町中で止まっていては、他の人にも迷惑になりますから」