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空の記憶~あなたと私と彼、それから~
第9章 第三話【波の音】 絶望の果て
幸は波打ち際から海へと進んでゆく。海水は直に幸のふくらはぎ辺りまでの高さになり、次には腰までに達した。それでも幸はどんどんと沖へ向かって歩いてゆこうとする。だが、すぐに脚が底へ届かなくなり、肩まで海水に浸かることになった。顔だけが辛うじて水上にある状態でさえ、幸は涙を流していた。だが、自分の頬を濡らすのが海水なのか、涙なのかは最早、幸にも判らない。幸の頭がすっぽりと水に呑み込まれようとしたまさにそのときである。