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狂愛の巣窟
第9章 【狂愛の巣窟ー最終章Ⅰー】





涙を拭い、そっと抱き締める。




「はぁ……出逢う順番間違えたね、私たち」




「うん……親父より先に出逢ってたかった」




「でもね、私は享さんだから結婚したんだよ……先に一颯くんと出逢って恋に落ちていたとしても、後で出逢った享さんを選ぶんだと思う」




「どうして?俺がプロポーズしても?結婚してたら?」




「もし、一颯くんと結婚してても私は享さんと出逢ったら秒で恋に落ちて一颯くんとの別れを選ぶ………ごめんね」




有りもしない未来を想定して最悪の結末を用意する。
“遊びなんだよ”と平気で言ってのける。
ごめん、泣かせちゃった。
優しくしたら元も子もないから。
なのに抱きついて「捨てないで」と縋りつく。




「俺、十和子を失うなんて考えられない……生きていけないよ」




「バカ、生きていけるよ」




「2番目で良いから俺を愛して……」




捨てられないように必死。
傷付けて終われない。
こんなの、無理だ。
紅い目をした一颯くんを振りきれなかった。




涙を拭っても拭っても溢れてきてむせび泣くキミに私から再びキスをした。
涙を止める方法なんてこんな事くらいしか思いつかない。
角度を変えて絡ませる舌で愛の続きを囁き合う。




「捨てれない……どうしよう、一颯くんの事……好き」




どうしてこの口は懲りもせずこんな言葉を紡ぐのだろう。
曖昧で何の保証もない。
失いたくない…ただ自分の事しか考えてない卑怯な逃げ方。




「俺も好きだよ、もう誤魔化しきれないんだ……困らせてごめん、今のままで良いから俺の前から消えてかないで?キスもセックスもずっと十和子とが良い…」




純粋無垢なキミを巻き込んでこんな事まで言わせて、壊すという選択が出来ずに居た。
彼の未来を取り上げてしまう。
色んな可能性を私が潰してしまうの。
早く気付いて……なんて都合の良い解釈で始めから用意されていた結末なんだ。




惚れて惚れて、惚れて惚れて依存させる。




何とも思ってなかったのにな。
気を付けていた事は後腐れなく関係を終える事だけだった。
身体だけの関係で心までは引っ張ってこなかったつもり。
大人の関係ばかりだったから。












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