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狂愛の巣窟
第9章 【狂愛の巣窟ー最終章Ⅰー】





乱れた服を直し距離を取っても意味はなくて詰め寄ってくる。
こんなに抱いて、随分余裕ないのね。
いつになく真剣だからおちゃらけるのも違うような気がして。
バカね…と言えない。




「あげない」




こっちも真剣な顔して答えたら澄んだ目が少し曇っちゃうね。
チュッと不意打ちキスしてからの「あげないよ」で逃げ道を作ってあげる。
仕方なくキミは甘えるしか出来なくなるの。
そっと肩を抱き締めたら背中丸めて胸に顔を埋めてきた。




良いんだよ、今はそれで。
根本的な解決には至らないけど、それで良い。
至ってしまうと終わるからね。
それでも際どいところまで欲しがるのが人間の欲で。
そういうの全部、尊いなって。
ただ、それだけ。




ごめんね、苦しい…?




「十和子が好き過ぎておかしくなりそう」




溜め息混じりに言うから胸がギュッとなる。
スリスリしてきて
「ねぇ、本当ヤバい……好き」って言わせちゃう。
その髪に触れたらまた収まらなくなるよね。




「一颯くん、時間……大丈夫?」




話題を変えてもすぐにその熱っぽい視線に囚われちゃって。




「行きたくない……今日はずっと一緒に居たい」




「ダメだよ、サボりは良くないよ」




「嫌だ、離れたくない」




そう言って間髪入れずに重ねてくる唇。
押し倒すように強引なキスだけど、徐々に優しい。




「も、もうこれ以上は……」




拒んでも拒んでも、キミは引き下がらない。
ギュッと両手を握られて
「爆発しそうなんだよ、どうすれば良い?今すぐ十和子を奪い去りたい」なんて言うんだもん。
女として、核が疼くでしょ。




「もう充分奪ってるよ、ココ」




一颯くんの心臓あたりを指で押して言う。
頬を撫でると手も重ねてくる。
「足りないよ」ってキミは涙を流すけど。




「好きよ、一颯くんの事、一人の異性として」




「……だったら俺のモノになってよ」




「今のままじゃダメなの?どうしても私を離婚させて手に入れたい?父親と絶縁になっても?」




「俺は十和子を取るよ」




生粋の信者だね。
そうさせてしまったのか。
責任、取らなきゃ…だね。










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