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欲しいのは愛だけ
第12章 手にしたもの
クラブのママさんだけでなく、
泥酔した航平さんを連れて来てくれた若い女性も一緒に来ることもあった。


「あのね、初めていらした時、
航平さんが浮気しちゃったのかと思ったのよ?」と言うと、
ケラケラ笑いながら、
「メイさんにベタ惚れじゃないですか?
いまだに私と他のスタッフのこと、間違えるくらい覚えて貰えないんですよ?」と言う。

「この子、お化粧しない方が綺麗なんだけど、
若い子って本当に同じようなお化粧するわよね?」と、ママさんも笑う。


「でも…私は全然お化粧もしないし、
髪も構わないし、
女子力、低すぎて嫌われちゃったのかなって思ってたんです」と言うと、

「この手料理こそ、
女子力200%って感じでしょう?」と更に笑う。


「マリちゃんは、とにかく、
料理を覚えるべきね?
それと、オトコを見る目を養うことかな?
ママみたいに失敗しないでね?」


「んっ?
そのママって言う言い方が…?」

「ああ。
周りには言ってないけど、
この子、実の娘なのよ。
父親は居ないの。
私、いわゆるお妾さんだったけど、
この子を授かった時点で自分から姿を消したの。
相手のお家、壊したくなかったから。
この子は音大出て、
在学中からお店でピアノ弾いてたけど、
今は接客の方が楽しいみたいね?
でも、この子には普通に結婚とか、して欲しいわ」と寂しそうに笑った。


「あの…ご結婚は考えなかったんですか?
1人で子育てするなんて…」


「相手は妻子待ちだって知ってたし、
妻とは冷めてるからとか、
離婚するからとか言っても口先だけだったし。
そんな優柔不断なオトコなんて、
こちらから願い下げよ?
1人で育てた方がせいせいするわ」と、今度は豪快に笑った。


「私…最初の結婚で…
元の夫は浮気して、
相手の方が子供が出来たからと離婚を迫ってきて、
そのまま離婚しちゃったんです」

「まあ!
なんて図々しい浮気相手なのかしら?
おまけに元夫も同罪だわ。
別れて良かったじゃない?
森田さんはその点、
メイちゃんにベタ惚れだし、
男らしいじゃない?」

「私にも、悪い処はあったんです。
でも…子供も出来ない、女として欠陥品ねとまで言われちゃって、
あの時は本当に辛かったです。
でも…口にしたら、大したことなかったですね」

「そうよ。
今が良ければそれで良しよ?」とママさんは言った。
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