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欲しいのは愛だけ
第12章 手にしたもの
「メイ、どうした?
大丈夫か?」と、航平さんが私を抱き締めて顔を覗き込む。

「頬が赤くなってるな?
それに、ここ、ぶつけてるし」と言って、
心配そうな顔をする。


黒服の男性がママさんに、
「こいつがメイ様の頬をいきなり叩いて、
倒れたメイ様がこちらのテーブルの脚に頭をぶつけられてました」と説明する。


ママさんは、
「大切なお客様に手を挙げるなんて、言語道断です。
体験入店はこれで終わり。
二度と顔を見せないで?
あ、銀座ではもう、働けないから。
それと、森田様への治療費や店からの損害賠償も請求するから」と一気に言うと、
黒服の男性に目で合図をすると、
私に向かって心配そうに、
「メイちゃん、ごめんなさいね。
私の監督不行き届きだわ。
頭を打ってるから、病院に念の為に行った方が良いわね。
この時間だと、救急車、呼ばないとダメかしら?」


「でも、大袈裟にしてしまうとご迷惑をお掛けしてしまうから…。
ちょっとびっくりしただけで、大丈夫です。
少しお客様と過ごしてホテルに送ってから、
夜間対応の処に、タクシーで行きます。
本当に…大丈夫です」と笑った。


黒服の男性が、
冷やしたタオルを持って来てくれたので、
お礼を言って少し冷やしながら、
「航平さん、先にお席に戻ってて?」と言った。


ママさんは、
「ちょっと話をしてくるわね?」と言ってバックヤードに下がってしまったので、
私は髪を整えて、席に戻った。


「貧血起こしてしまって…」と説明すると、
お客様の方が心配してしまい、
今夜はお開きにしようと言ってくださった。

「ちょっと時差ボケもあるから、ホテルで休むよ?」と言って、
ハグをしてくれたので、
黒服の方に車を回して貰うようにお願いして、
下まで送った。

ママさんも一緒に見送りしてくれて、
美しい着物姿のママさんには、
手の甲にキスをして、
「日本女性は本当に美しいですね?」と言いながらタクシーに乗り込んだ。



お店に戻って会計をと言うと、
「とんでもありません。
彼女、まだ、奥に居りますわ。
一体…?」と訊くので、

「元の夫の浮気相手で、
その後、再婚してお子様と3人で暮らしているはずなのに…」と震える声で言った。

「そう…。
話を聞いておくわね。
とにかく、病院に行ってきて?
心配だから、報告くださいね?」と手を握り締めて言われた。
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