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欲しいのは愛だけ
第1章 港ごとにオンナって…
時間通りに、
私が「藤堂先生」とお呼びしている社長の奥様が来社された。

会社の役員もしているけど、
ズカズカと中に入るようなことはしないで、
まずは秘書の私に取り次ぐようにと受付に声を掛ける。


私は受付までお迎えに出て、
「藤堂先生、いらっしゃいませ。
社長室で社長はお待ちです」と伝えて、
重い鞄をお持ちしながら社長室にお連れする。


ソファを勧めてからお茶をお二人に出して、
「お出掛け前に簡単なブリーフィングさせていただきますね?」と言う。


会食を兼ねた打ち合わせをして、
そのまま雑誌のインタビュー取材を二人で受けることと、
会食の参加者の説明、
取材の趣旨と直近3ヶ月分のその雑誌のインタビュー記事のコピーを渡した。


「本当に青山さんは優秀ね?
今日も同行してくれるのかしら?」と奥様は言った。


「はい。インタビュー終了まで同行させていただきます。
その後、社長は副社長を伴い別件の会合と会食があり、
そのまま、お時間によってはご宿泊いただくことになるかもしれません」と答えた。


「資料を読みたいから、タクシーは15分後にしてくれるかしら?」と言って、コピーに目を落とし始めたので、

「承知しました」と言って社長室を出た。


奥様は、確か社長より3歳歳上と聞いているけど、
切長の瞳にショートヘアのスレンダーな美人だ。
お子様も居ないそうだ。


たまたま、私が同じ四谷の大学を卒業していて、
しかも高校まで通った横浜の丘の上の女子校も同窓ということで、
とても私のことを可愛がってくれていた。


私も、女好きでだらしない社長より、
余程奥様の方が尊敬も出来て好きだったので、
仕事で同行出来るのはとても楽しかった。
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