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欲しいのは愛だけ
第1章 港ごとにオンナって…
ランチ会食とインタビューは順調に進んで、
17時前には終了した。
校正のスケジュールなどを確認して、
タクシーを手配して社長には次の会合の場所へ行くよう伝えて送り出した。
「青山さん、この後は?」と奥様に言われて、
「一度、社に戻りましてから退社します」と答えると、
「夜は?」と更に訊かれた。
「夜は特に予定はございませんが…」
「だったら、食事っていうか、
飲みに行かない?」と誘われた。
「四谷の小さいフレンチ。
独りでは行きにくいお店だから、
付き合って?」と言うので、
私は頷いた。
四谷と市ヶ谷の間の裏通りにある小さなフレンチは、
私も知らないお店だった。
訊くとオーナーシェフとその奥様が二人で切り盛りしているらしく、
奥様の方は私と同い年くらいでシェフとは随分歳が離れているように見えた。
奥様はソムリエバッジをつけていたので、
お料理に合うワインを選んで貰い、
アラカルトでシェフがお薦めのものを出して貰った。
藤堂先生はワインのせいか珍しく饒舌だった。
「藤堂先生だなんて…。
香織で良いわよ?
勤務時間じゃないんだから。
私も名前で呼んでも良いかしら?
さつきさんだったわね?
メイって呼ぼうかしら」と笑う。
「えっ?
その呼び方、懐かしい。
子供の頃からずっとそう呼ばれてました」
「何歳だったかしら?
30歳くらい?」
「はい」
「若いわね?
ご結婚は?」
「してましたけど、
離婚しました」
「あら、ごめんなさい」と言いながら、
そんなに申し訳なさそうな顔はしてない。
「なんで離婚したの?
ああ、話したくなかったら言わなくて良いのよ?」
あまりにもあっさり淡々と訊くので、
可笑しくなってしまって笑いながら答えた。
「浮気されたんです。
おまけに相手に赤ちゃんが出来たからって…」
言いながら涙が出ていて、
自分でも驚いてしまう。
考えたらその話、
口にしたのは初めてだったかもしれない。
「赤坂かなんかのホステスさんだったんですよ。
晴天の霹靂でした」と言って、
汕頭刺繍の白いハンカチで涙を抑えた。
「浮気する男は病気だから治らない。
離婚して正解よ?
その時、やり過ごしても、
また、浮気するもの」と静かに藤堂先生は言って肩をすくめた。
17時前には終了した。
校正のスケジュールなどを確認して、
タクシーを手配して社長には次の会合の場所へ行くよう伝えて送り出した。
「青山さん、この後は?」と奥様に言われて、
「一度、社に戻りましてから退社します」と答えると、
「夜は?」と更に訊かれた。
「夜は特に予定はございませんが…」
「だったら、食事っていうか、
飲みに行かない?」と誘われた。
「四谷の小さいフレンチ。
独りでは行きにくいお店だから、
付き合って?」と言うので、
私は頷いた。
四谷と市ヶ谷の間の裏通りにある小さなフレンチは、
私も知らないお店だった。
訊くとオーナーシェフとその奥様が二人で切り盛りしているらしく、
奥様の方は私と同い年くらいでシェフとは随分歳が離れているように見えた。
奥様はソムリエバッジをつけていたので、
お料理に合うワインを選んで貰い、
アラカルトでシェフがお薦めのものを出して貰った。
藤堂先生はワインのせいか珍しく饒舌だった。
「藤堂先生だなんて…。
香織で良いわよ?
勤務時間じゃないんだから。
私も名前で呼んでも良いかしら?
さつきさんだったわね?
メイって呼ぼうかしら」と笑う。
「えっ?
その呼び方、懐かしい。
子供の頃からずっとそう呼ばれてました」
「何歳だったかしら?
30歳くらい?」
「はい」
「若いわね?
ご結婚は?」
「してましたけど、
離婚しました」
「あら、ごめんなさい」と言いながら、
そんなに申し訳なさそうな顔はしてない。
「なんで離婚したの?
ああ、話したくなかったら言わなくて良いのよ?」
あまりにもあっさり淡々と訊くので、
可笑しくなってしまって笑いながら答えた。
「浮気されたんです。
おまけに相手に赤ちゃんが出来たからって…」
言いながら涙が出ていて、
自分でも驚いてしまう。
考えたらその話、
口にしたのは初めてだったかもしれない。
「赤坂かなんかのホステスさんだったんですよ。
晴天の霹靂でした」と言って、
汕頭刺繍の白いハンカチで涙を抑えた。
「浮気する男は病気だから治らない。
離婚して正解よ?
その時、やり過ごしても、
また、浮気するもの」と静かに藤堂先生は言って肩をすくめた。