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欲しいのは愛だけ
第1章 港ごとにオンナって…
「あの人も同じ。
病気だから。
今日だって女と一緒でしょ?」と言われて、
目を丸くしてしまった。

「メイちゃんたら!
いつも冷静沈着なポーカーフェイスなのに、
そんな顔もするのね?」と笑う。

「ジャケットとかにも香りが染み付いてるんですもの。
シャネルの香水。
私、とっくにあの香り、辞めたのに、
馬鹿の一つ覚えみたいに、愛人出来るとそれをプレゼントしてるでしょ?」と言う。

確かに私が入社した頃、
藤堂先生は同じ香水をつけていたけど、
今はエルメスの香水に変わっていた。


「妻の香水、変わったのも気がつかないくらい、
私には興味もないし、
触れもしない。
まあ、たいして上手くもないくせに、
しつこくて鬱陶しいから良いんだけど。
本当に最低。
そんな男と一緒に居る私も最低よね?」

「そんな…」

「ねえ、お願いがあるの」と、
声を顰めて真剣な顔をする。

「私ね、離婚したいの。
でも、ただ離婚するのは嫌なの。
あの人のこと、丸裸にして放り出したいの。
協力してくれる?」

「丸裸?」

「不貞行為で私と離婚するだけでなく、
会社への背任行為で社長の椅子も奪ってしまう。
証拠を集めたいから、
協力して?
あなたのことは、守るし、
悪いようにはしないから」


藤堂先生は、物凄く強い人だと思った。


「判りました。
私…社長に対しては尊敬する気持ちもなくて、
仕事を辞めようかと思ってました。
藤堂先生が…香織さんが会社を変えてくださるなら、
出来る範囲になるかと思いますが、
ご協力させていただきます」と答えた。


乾杯して、
その後は他愛のない話をして、
タクシーでそれぞれ帰宅した。

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