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重ねて高く積み上げて
第2章 私の時間
それがさも当然かのように言うけれど、色々聞く、の中に下ネタを入れなければいいだけの話なのだ。私に拒否権がないような言い方は、この際目を瞑るとしても、そこだけは譲れない。

お箸を握る手に力が入る。迷惑だって、言え、私。

「好きなやつの事は全部知ってたいし。言葉通り、全部な」

不覚にもドキリとした。

珍しく真剣な顔をして言うから、思わず目を伏せてしまう。言いかけていた言葉も、押し戻されてしまった。

「あんま伝わってないみたいだけど、本気だよ。脈ナシの態度取られたからって、すぐに諦めつくほど軽い気持ちでもないし、さっさと乗り換えられるような性分でもないし」

机の下で爪先に衝撃を感じる。反射的に足を引くも、また追いかけてきてぶつかる。睨みつけようとしたけれど、整った形の中にある真っ直ぐな目を見てられなくて、逸らしてしまう。

いつもなら平気で出来ていたことも、出来なくなってしまうくらいに今の私は動揺していて、おかしなことに動悸もする。高橋さん相手に、心臓がうるさいのだ。

おかしい。今までユウくんにしか反応しなかった心臓なのに。お箸を持つ手が震えている。

「俺、結構しつこいよ。春川が嫌なことは極力しないようにするけどさ、好きなやつが他にいても、そんな顔されたら諦めきれるわけない。⋯⋯ごちそーさま」

ぶつかっていた爪先から圧迫感がなくなる。末端冷え性なのに、いつまでも爪先が温かくて、靴越しに体温が移ってきたかのようだった。

玉子丼は、すっかり冷えていた。




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