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重ねて高く積み上げて
第3章 たゆたう
営業部のエースというだけあって、爽やかな笑顔と、裏表を感じさせない心地のいい言葉であれよあれよという間に、私をいつもの席に座らせてしまった。

ユウくんに紙袋を渡しながら、今朝と同じようにどこのお土産なのか説明している。顔こそ見えないけれど、聞こえる声は2人とも弾んでいる。丁寧語を使っているけれど、親しげに会話をしていることや、さっきの自動ドアの前での慣れた様子から顔見知りだということはわかる。

なぜ、いつ、どこで。そんな疑問が浮かび上がっては心に積もっていく。

最悪だ。

「偶然だけど、春川とメシ食えて嬉しいなー」

わざとらしいその口調も、整った顔がくっついているものだから、悪くはないかな、なんて――思えるはずもなく、乾いた笑いで返事をしながら真っ先に出されたお冷に口をつける。

誰かに好意を向けられていることを知られたくなかった。少しでもお互いに恋愛感情を抱いている男女なら、それをきっかけに関係性が変わり、めでたく恋人同士という展開になるのだろう。けれどそれはお互いに、の話。私達の関係性上、ユウくんの心に浮かぶのは、恋人の出来た妹を見る兄のような、少しの寂寥を含んだ祝福だろう。

勢いよく飲み干した冷たい水が喉を潤し、お腹を冷やす。

「ハナちゃん、なにか食べる?」

ヘラヘラした笑顔でそう言ったユウくんが、席を立ったお客さんに気が付きレジへ移動する。少し待つよう、アイコンタクトを送って。

「昼言ってた幼なじみって、オーナーのことか」

心臓が大きく脈打ち、顔に妙な熱が集まる。

高橋さんの視線はレジでお客さんと話をするユウくんに注がれている。

「い、言わないでくださいね」

「言うわけないだろ」

グラスを握る指先に血が通う。知らず知らずのうちに力を込めてしまっていたらしい。

高橋さんはいつものように軽い調子で、メニューに目を落とす。私も勧められたけれど、既にホットケーキを3枚たいらげている。これからまた何かを食べようとしても、入りそうな物はメニューの中になかった。

レジを済ませたお客さんが、出ていくのを視界の端で見る。ユウくんがテーブルのお皿やグラスを重ねて持ち、こちらへ歩いてきている。

メニューを見ている高橋さんとは別の物を見ようとすれば、私の目は自然とユウくんを追いかけた。
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