この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
重ねて高く積み上げて
第3章 たゆたう
木箱に入っているワインが顔を出した時、私の人生で全く初めての異質な高級感に当てられて、好奇心に喉が鳴った。

猫が甘える時のような音を隣で聞いた高橋さんが「興味あるだろ?」と満足そうに笑う。ビーフシチューの入っていたお皿を下がり、代わりにワイングラスが私と高橋さんの前に並ぶ。

高級レストランのウェイターよろしく、キッチンから出てきて隣に立ったユウくんが、しなやかで静かな手つきで注ぐ。一切の傷やくもりのないグラスに、赤黒い液体が音もなく溜まっていく。降り注ぐオレンジ色の照明に照らされて、妖しくも華やかな色に輝くワインは、よく手入れされた赤い薔薇のように見えた。

「試飲してないから何が合うかわからないけれど……フルーツもどうぞ」

可愛らしく飾り切りされたフルーツが小さな花束のように盛られて出てくる。オレンジやイチゴ、リンゴにメロンにマンゴーなど、季節を無視した様々な色と形のフルーツ達が、メロンの皮を皿にして、生け花のように飾られている。

明らかに2人分の量で、本来なら高橋さんが手をつけるまで待たなければならないけれど、プライベートな空間なので、それも無視して大きく咲き誇るオレンジにさっさと手をつけた。

二又に割れた皮の先が、内側に巻かれていてツルのようだ。口の中いっぱいに広がる甘酸っぱい果汁と、さわやかな香りが心地いい。

「オーナーも」

高級感溢れるボトルの胴体を鷲掴みして、高橋さんが勧める。慌てて用意されたグラスは、ユウくんの成人祝いに私があげた、縁が青く光る日本酒用のグラスだった。私があげたと言っても、親からのお小遣いを貯めて買った、正真正銘親のお金なんだけれども。

店内の明かりに照らされてキラキラ輝くそれは、今から15年前にあげた物とは思えないくらい綺麗で、まるで新品のようにも見えた。

「それ日本酒用のグラスですよね」

ワインを注ぐことを躊躇う高橋さんに、ユウくんは「これで飲むお酒が1番美味しいんです」と穏やかに笑いかける。少しもお酒を飲んでいないはずなのに、くらりときた。

新品のよう、だなんて当然だ。ユウくんは嗜む程度にしかお酒を飲まないのだから。グラスの出番なんて、15年のうち、何回あっただろう。

/26ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ