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重ねて高く積み上げて
第2章 私の時間
確かにいやらしくはないのだけれど、嬉しくはない。どうせスキンシップするなら、私ではなく、熱い視線を送っている女の子にしてほしい。

「そんなに怒るなよ。春川用にたくさんお土産買ってきたんだぜ」

机の上いっぱいに置かれたお土産をひとつずつ取り出しては、これはどこの県の有名なお菓子、こっちは有名なおつまみ、と少年のような笑顔で説明を始める。うんうん、と聞くふりをしながら、5分後の朝礼を思う。

今回の出張は長かったようで、県をまたいで取引先挨拶や新規開拓をしてきたらしい。今月はゆっくり出来そうだ、と勝手に私の椅子に座って回転している。

なんの報告だろう。私に報告する暇があれば、上司への報告書を一刻でも早く書き上げたらどうだろう。

あと3分……。

「高橋さん、そろそろ朝礼始まりますよ。戻られてはいかがですか?」

クールな吉野さんの声に、ギョッとした高橋さんが慌てて立ち上がる。勢い良く立ったせいで、嫌な音を立てて椅子が倒れてしまった。

「今度メシ食いに行こうぜ」

「行きませんよ」

「こんなに誘ってんのに! 1回くらい!」

倒れた椅子を元に戻そうともしないで、経理部のルームから出ていく人とご飯行きたくないです。
見送る私の笑顔は、とても輝いていたと思う。

嵐が去ったのは良いけれど、机の上いっぱいのお土産が残って、これを持って帰らなければならないことを考えると、どっと疲れる。銘柄もわからない香水の残り香が少しでも私好みだったら、こんなにたくさん持ってきて高橋さんも大変だっただろうな、なんて思いやれたのだろうか。

机の下で平積みにすると、デスクの高さと同じくらいの量がある。さすがに多すぎる。……あとでみんなに配ろう。

朝から苦手な人の相手をしたせいか、頭が重い。クッションの少ない背もたれに体重をかけると、古い椅子はぎし、と音を立てた。

ユウくん、今頃何してるんだろうなぁ。ホットケーキ食べたい。



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