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重ねて高く積み上げて
第2章 私の時間
「私苦手って言いましたよね……?」

吉野さんは持ち上げたうどんを、1度、出汁の中に戻す。そして、高橋さんが何かと理由をつけて経理部に来ては私を探していること、その度に女性社員が浮き足立って受付の奪い合いになり仕事が進まないこと、毎回食事に誘いに来ていること、1回行けば大人しくなるのではないか。それらをひと息で言って、何事も無かったかのように、またうどんを啜り始めた。

私に非はないはずなのに、泣きたくなってきた。心無しか、唾液の少なくなった口内で頬張る玉子丼が塩っ辛い。

ガツガツ来られても困るだけなのだ。過去、何度か苦手な相手に言い寄られた時、今と同じ対応をしていると、その人達はいつの間にか対象を変えていた。今回も直ぐに飽きられるだろうと思っていたのに、自信があるのか高橋さんはビクともしないのだから、余計に対応に困る。

加えて、どこまで本気なのか測りかねているから、冗談だと思い込むことで面倒事を避けている節がある。私がユウくんを思う気持ちと同じものなのか、過ごす時間や話を重ねてこれから確かめていくものなのか、私を暇つぶしの道具として遊んでいるのか、高橋さんの明るく軽い調子に、何もわからなくなってしまうのだ。

私は悪くないと弁明したいところだけれど、かなり迷惑そうな吉野さんの言い方から、高い頻度で経理部に足を運んでいるのだろう。私自身は、今初めてそれを聞いて衝撃を受けている。そこまで頻繁に会っている気はしていない。ということは、私が席を立っている最悪のタイミングで来ているのだろう。

高橋さんが来ている分だけ、私はトイレやコーヒーブレイクに時間を使っているということで⋯⋯勤務態度を改めるきっかけ⋯⋯だとしても喜ばしいことは少しもない。

「あれだけ押されて少しもなびかない春川さんに私は驚きますけれど⋯⋯好きな人でもいるんですか?」

「幼なじみにずっと片思いしてるんです」

「いつから?」

これを言ってしまえば、私が処女であることが吉野さんにバレてしまわないだろうか。この年でまだ処女であることは、人によっては、からかわれる事柄になってしまう。吉野さんがそれをネタにからかうような人でないことはわかるけれど。

返答に戸惑って目線を上げると、不思議なものを見るかのような目とかち合う。

「⋯⋯物心ついた頃から⋯⋯」

出た声は思ったより小さなものだった。
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