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濡れて堕ちて……
第8章 甘美
「汗と涙と…潮まで吹いちゃって、脱水状態かも知れませんね」

袋をガサガサ漁り、私の頬にひんやりと冷えた何かを当ててきた。

ペットボトルのスポーツドリンクだ。



「30分もあの状態じゃ無理もありませんよね」

30分もあのままだったんだ…。

失神を繰り返し、途中から意識も朦朧としてて時間の感覚なんてなかったからわからなかったけど

死なずにいれたのが奇跡だ。


ペットボトルのキャップを開け私に手渡そうとするが

ずっと吊されてた腕に、そんなすぐに力なんて戻るわけもなく

掴もうとしたペットボトルを倒してしまった。

幸い、すぐに徹が受け止めてくれたから全部流れずに住んだけど。

「まだ感覚が戻りませんか?」



力が出ない。

でも、暑いし叫びすぎて喉も乾いたし

何とかして飲みたいなぁ…。





「んっ、んぐ…」

喉を潤す冷たい喉越し。

ゴクゴクと喉を鳴らしながら必死に飲んだ。


徹が

口移しで飲ませてくれてる。



「こぼしてますよ?子供みてぇ…」

口元に零れる滴を徹の舌がすくいあげてく。


スポーツドリンクを口にふくみ、また口移しで…。


今は

こんなやつの口移しでもいい。


それぐらい極限状態だ。


「まだ飲みますか?」


黙って首を縦に振る。





私の中のプライドや自尊心

人としての意地は





既にギリギリだった。
















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