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濡れて堕ちて……
第10章 代償
「冷蔵庫にあった残り物でこんなに料理が出来るなんて尊敬します」

扱い方もわからないならそんなに買い込まなければいいのに。

使いもしないのに買い込む癖、浩一と一緒だ。

浩一も食べもしないのに大量のお菓子を買い込んで、気づけば賞味期限切れでいつも捨てる羽目になってた。



浩一…。



「陽子さんって中華も作れ──────」

「浩一は中華が好きだったから」





久しぶりに徹の前で放った浩一の名前。




私の体は徹に支配されてるかも知れない。






浩一のムスクの香りも体から消えて、徹のシトラスやローズの香りに包まれても






私の心の中には浩一がいた。






思い出すのは浩一の事ばかり。







バンッ

徹が箸をテーブルに叩きつけ、ハッと徹の方を見ると


「まだ浩一さんの事が頭から離れませんか…?」



ヤバい…。


徹のこの表情、いつもの余裕の笑顔は消え怒りが滲んでる。

怖い…。

椅子から立ち上がり後退りで逃げようとしたが

「やっ、きゃあっ!」

腕を掴まれそのまま鞄のようにソファに投げ倒されてしまった。

咄嗟に起き上がり逃げようとするが

「あっ、ゲホッ」

首に手をかけられ

力を入れるか入れないかギリギリの力加減で締め付けて来る。

そんなに力は入ってないけど、息が詰まる。

震える私の体の上で徹は冷たい目で私を見下ろしている。
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