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濡れて堕ちて……
第10章 代償
「どんなに酷い事をされても、あんたなんか…」
「わかってます」
狂ってる。
だけど
何て哀しい人━━━━━━━━━━━。
愛し方もわからず、こんな事でしか自分の気持ちを表現出来ないなんて
だからといって、浩一を傷つけていい理由にはならない。
監禁したり暴行したり、そんなの理由にならない。
徹のしてるこの行為はあまりに虚しすぎる。
「あんたのせいで帰る場所、なくなっちゃったじゃない…」
「帰らせるつもりなんてありませんでしたから」
冷たく濁った目。
誰かを傷つけても痛くも痒くもないって目だ。
「このまま私を監禁し続けるつもり?」
「解放したら陽子さんは俺から逃げるでしょ?」
逃げる?
どこに?
どこに逃げるって言うの?
逃げてどうなるの?
誰か、私を待ってくれてる人でもいるの?
「あんたと一緒よ。私、何もかも無くしちゃったのよ…?今更どこに…?」
私の言葉を遮るように、徹の唇が私の唇を塞いだ。
私の目も徹と同じように
何の希望すら持たない
濁った目になってしまった。
そんな気がした。
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