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濡れて堕ちて……
第11章 泡沫
そもそも私が徹と結婚したのは
半分「諦め」もあったと思う。
身内や親類関係の人間が
「結婚は?お相手は?」と急かすもんだから。
婚活なんて面倒くさいし
合コンって言うのも何か違うし
「この人でいっかな?」っていう勢いもあったと思う。
意外にすんなりプロポーズされて、こちらもすんなりお受けした。
浩一は自分の兄弟、お兄さん達が若くして結婚してるからか結婚に対して抵抗や戸惑いはなかったみたいだし。
式だ披露宴だとトントン拍子に話を進めて…ってそんな感じだった。
で、気づけば味気無い結婚生活の始まりだった。
心底惚れ合って結婚した訳じゃなかったのかも知れない。
だから、結婚してからもちょっとした価値観の違いから大喧嘩に発展したこともあったし。
それでも、毎日が楽しかった。
本気で…、本気で他人と向き合って暮らしてたのだから
最初は勢いや妥協だったかも知れないけど。
結婚は
自分と他人という
全く異なる2つの丸い円が重なり合う事。
そして
その微妙なズレを如何に許し理解し愛し合えるかなのだ。
「陽子さん?」
ハッ!
どうやら、このぼんやり空想に耽るのは私の癖みたいだ。
「どうしたんですか?怖い顔して」
「別に。お帰り」
「あ、今日は焼き魚なんですね!ラッキー」
リビングのテーブルでぼんやりしてる私に徹が無邪気に話しかけて来る。
心配してくれてたみたいだけど、晩ごはんにと作って置いた焼き魚を見て大喜びしている。