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濡れて堕ちて……
第11章 泡沫
「陽子さんって料理の天才ですよね!冷蔵庫の中のものだけでこんな美味しい料理が作れちゃうんですから」

「…これぐらい誰でも作れるわよ」







あの日、浩一を無くした日から

私はあの監禁部屋に閉じ込められることはなくなった。

体中の拘束具からも解放された。



監禁しなくても、拘束しなくても

私に帰る場所なんて、もうないのだから。

ここから逃げ出しても行くとこすらないのだから。



「うまっ!この焼き加減最高ですよ!」

「…そう」



まぁ、放って置けば徹が勝手に肉やら野菜やらと食材を買ってきて冷蔵庫に入れてしまう。

その材料から作れる料理を作ってるだけの話だ。


拘束されなくなったからと言っても1人で外に出る気にはまだなれない。


今の私は

きっと晴天にすら腹を立ててしまうだろう。




徹の目の前に座り、私も胃に無理矢理食事を流し込んだ。

食欲なんてないけど、これ以上痩せたら衰弱死するかも知れない。



「今日の契約でちょっと失敗したことがあったんですけど、陽子さんの手料理食べたら元気が出ました!こっちの筑前煮も超うめぇ!」


浩一とは全然違う。

浩一は契約だの何だのと、私の前で仕事の話はしないし

私の料理に感想を言うなんてまず有り得ない。


何もかもが違う、だから惹かれたはずなのに


何故だろう━━━━━━━━━━━



うるさくてイライラする。







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