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濡れて堕ちて……
第12章 審判
マンションの外に出ると回りに人気はなく

車すら走ってなかった。



勢いで出たはいいがどうしようか…。

でも早くこの付近から移動しないと徹に見つかってしまう。


とにかくこの場から少しでも離れなきゃ。


無意識に自宅の方角に向かって走り出した。



こんなところから自宅まで走って帰れるはずがない。

財布は置いて来たからバスや電車にも乗れない。


かと言ってこんな格好で交番になんか駆け込めない。


どうしようか…。



走りながら途方に暮れていると




道路に差し掛かった瞬間に見えた灯り。

車のライトかと思い、灯りの方向を見ると


タクシーだ。



そうだ、タクシー。

これで自宅まで戻って…

自宅に行けば何とかなる、私のへそくりがあったはず。



「……すいませーんっ!すいません、停まって下さい!!」




歩道から道路に身を乗り出しながら手をあげて必死にタクシーを止めた。

すでに乗客がいないことを願い、ラストチャンスだと言わんばかりに。



こんな上から下までびしょ濡れの女、不審者だと思われるかも知れないが……



「すいません!停まって…」


お願い、停まって!!





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