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濡れて堕ちて……
第12章 審判
タクシーは私の目の前で停まって後部座席のドアが開いた。
「はい、ありがとうございます。どちらまで━━━━━━━」
「●●町の▲▲マンションまで!急いで下さい!!」
徹が追って来たらという恐怖で、雪崩れ込むように乗車。
運転手さんの声を遮るように目的地を告げた。
バックミラー越しに見えた運転手さんの表情
「ヤバい客を乗せたかも…」という恐怖に怯えた表情だ。
「あ、はい…。えっと、●●町って言ってもあの辺は広いから…」
「あとは私がナビをしますから、とにかく出して下さい!」
「あー、はいはい!」
徹のマンションから少し離れた…、けど、油断出来ない。
徹の縄張りであるこの地域を抜けるまでは安心出来ない。
この時間なら渋滞もしてないだろうからさっさと脱げ出せる。
窓から外を見て徹の影がないか必死に確認。
今の私、運転手さんからすればまるで犯罪者だ。
手ぶらでびしょ濡れで、窓から見えないように身を隠し辺りをキョロキョロ見渡している。
確かに逃亡者である事は代わりないけど。
「お、お客さん、どうしたんですか?その格好…」
「え…?」
ドキドキする私の不安を見抜いたのか運転手さんが話しかけて来た。
まぁ、運転手さんもこの不気味な雰囲気に耐えられなくなったのだろう。
もしかして、幽霊か何かだと思われてるのかな?
「あ、あのー…」
雨も降ってないのに、びしょ濡れじゃ可笑しいよね。
でも、適当な答えが浮かばない。
そもそもこんな状況で通じる言い訳があったら教えて欲しい。