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濡れて堕ちて……
第2章 慟哭
ロビーで会計を済ませ病院の後にすると
運び込まれた時は意識はなかったがこの病院、確かうちから近所の病院だ。
ここからならバスで帰れる。
けど、どうしよう…。
何となく気まずい。
私の少し前を歩くスーツ君。
第一発見者だし気を使ってくれてるのかな?
一応、顔見知りだし、ね。
さっきは驚き過ぎて何も言えなかったけど
何はともあれ、この人は命の恩人なんだから。
「あ、あの…!」
私の呼びかけに、足を止めた。
ちゃんと言わなきゃ、お礼。
あー…でも気まずい。
「助けてくれて、ありがとうございます」
スーツ君、私って気づいてるのかな?
いつもスーパーのレジにいる女って。
それとも気づいてないとか?
「…………………。」
広い病院の庭で、こちらを振り向く事なくただただ私達は立ちすくしていた。
…何よ、この沈黙。
何か言ってよ。
「スーパーの外で鈴村さんお礼言われるなんて、何か変な感じです」
気づいて…るの?
こちらに背中を向けたままで
でも、その声色とその台詞は
気まずくて恥ずかしがってた私の緊張を一瞬で溶かしてくれた。