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濡れて堕ちて……
第3章 火花
カチカチカチカチ…
時計の音が響くリビング。
秒針が進む音って、こんなに大きかったかな?
安物の時計なのに。
テーブルには夕食の準備が整っている。
カチカチカチカチ…
私の携帯には、あのお客様のアドレスが入ってる。
『赤外線で送ります。あ、俺の名前は新村徹って言います』
今更だけど
何だかとんでもない事をしちゃったんじゃ?
毎日、毎朝来るお客様の連絡先。
お礼だなんて、逆に迷惑だったかも知れない。
新村 徹さん。
年齢はいくつなんだろう?
今日、ずいぶん長いこと付き添ってくれてたけどお休みだったのかな?
でも、いつもみたいにスーツ着てたし。
私がバスに乗った後、新村さんはどうしたんだろう?
帰ったのかな?仕事に戻ったのかな?
そもそも何の仕事をしてるんだろう?
家はあの辺なのかな?
独り身…?なのかな?
「ただいま!」
「きゃあっ!」
突然背後から聞こえた声に心臓が止まりそうになった。
思わず立ち上がり振り向くと
「あ…浩一。お、お帰りなさい」
「あ、あぁ。何だよ、でっけぇ声出して…」
私、何て事を考えて…!
別に新村さんが独り身だろうが、どこに住んでようが関係ない。
今日助けてもらったお礼をしたいだけ。
私には浩一がいるのに…。