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濡れて堕ちて……
第4章 大罪
時刻はもうすぐ15:00。

いつもなら仕事の終わる時間だ。


買い物しながら晩ご飯のメニューを考えてるところだ。


とりあえず、顔を洗い軽くメイク直し。

髪なんか洗ったら乾かさなきゃいけない。

そんな時間ないし、かと言ってびしょ濡れで帰るわけにも行かない。

近所の目があるし。

髪は鞄に入れてある折りたたみ式の櫛で軽くとかしただけ。

不審な点がないように仕上げておこう。


帰りはご近所にバレないように待ち合わせに使った喫茶店。

徹がそこまで送ってくれるみたいだし。







今日は、徹の為に手料理を作る予定だったのに、とんでもない事になっちゃったな。

けれど、私の中に後悔なんてこれっぽっちもなかった。

でも、徹は?


徹はどう思ってるの?


泣いてる私に同情してくれただけ?



車内で何も喋らず車を転がすだけの徹に私は不安を覚えていた。

徹から話してくれないと、何をしゃべっていいのかわかんないんだけどな。


「あの…」

「!?何?」


まるで私の心を呼んだかのように絶妙なタイミングで声をかけられて

思わず声が裏返る。



「俺、後悔してませんよ」

「え…?」

「毎朝見てました。陽子さんの笑顔」

「毎朝?」

「仕事に行くのが嫌だったり、何となく気分か冴えなかったりしても、陽子さんの笑顔見るとやる気が出てたって言うか…。俺の朝は陽子さんの顔を見るところから始まる訳で…」


しどろもどろしながら話すその内容。

浩一には、ただのパートだと馬鹿にされてた。

自分でも、浩一に比べたら取るに足らない仕事だと思ってた。


けど


「だから、まぁ…そのー…」


こうやって見てくれてる人がいる。

私の笑顔を見て、元気になってくれる人がいる。
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