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濡れて堕ちて……
第4章 大罪
赤信号に掴まった。

この信号が青になれば車は走り出す。

喫茶店はすぐそこ。




「俺は陽子さんのことが────────────」


嬉しい。

私の作ってる笑顔は無駄にならなかった。





そう思うと、また涙腺が緩む。
 
意を決した告白をしようと、私の方を向いた徹だけど

私の涙にまた参ったみたい。




「勘弁して下さいよー、陽子さん…。俺女の涙に弱いんですよー…」

少し困ったようにはにかむ、ひだまりの顔。










お願い…

このまま赤信号のままでいて。

青になんかならないで。





そんな途方もない願いを神様が聞いてくれる訳もない。

信号は青になり喫茶店の駐車場の到着。




帰りたくない。

また会いたい。


「魚、腐っちゃわないうちに料理して下さいね」

助手席から降りようとした時だった。

それって…、まさか?


「一応楽しみにしてたんですからね。焼き魚」






また会える?

また会えるって事?





「じゃぁ、また連絡していいの?」

「いや…普通にして来て下さいよ。仕事中じゃない限り返信もしますから」


恐る恐るした質問、なのに照れたような返答が返って来た。

「つーか、俺からもメールとか電話とかお誘いとかしますから!!」




私が徹に感じてた気持ちがやっとわかった。
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