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ホンモノはいらない
第3章 始まりの雨
カウンターへ戻っていく彼の後ろ姿にもう一度頭を下げて、真雪はため息交じりに外を凝視する。

雨脚が治まる気配はないけれど、館内には閉館を知らせる物悲しいメロディが流れ出している。傘だって、手に入ってしまった。

このまま図書館にいる理由なんて、もう見つからない。

バタバタバタバタ……ッ

自動ドアが開き、凄まじい音が聞こえてくる。
けれど過去は過去のまま記憶の片隅に留まって、真雪に襲いかかろうとはしなかった。

傘を広げてみれば、骨が一本僅かに折れ曲がっていた。


知り合いでもない、ただの利用者に貸すなんて、

……変な、ひと

くすりと微笑んで、雨の中へ踏み出す。
瞬く間にブーツがずぶ濡れになり、傘から落ちる雨だれがコートにあたる。

バタバタバタバタバタ……ッ

雨は、凄まじい勢いで傘に降り注いでいる。


変なのは、あたしのほう…か。


小さな苦笑が溢れた。



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