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ホンモノはいらない
第3章 始まりの雨
傘を干す理由も、そのやり方も知らない。
知っているのは、アルに任せておけば間違いないと言うことだけ。それだけで充分だった。
出会った頃は、真雪の方がずっと常識人で優等生だった。
けれどそれは学校と言う狭い世界での話。世間に出れば、真雪の知っていることなど大して役に立たない。
全く、役に立たない。
「跨ぐぞ」
ベッドが沈んで、窓際に移動したアルが冷たい空気と一緒に布団に入ってくる。
真雪は小さく身震いすると、アルに体をすり寄せた。
「暖かいな…」
寒さを凌ぐように体に巻きついてきた腕が妖しく蠢いて、手がパジャマの中に滑り込んでくる。
「…つめた」
不快そうに唸りながらも、それを受け入れた。
節くればった手が優しく背中を撫でている。その冷たい感触と頼りない抱擁に、ゾクゾクと全身が粟立つ。
真雪は穏やかな歓びを味わうようにそっと目を瞑った。
知っているのは、アルに任せておけば間違いないと言うことだけ。それだけで充分だった。
出会った頃は、真雪の方がずっと常識人で優等生だった。
けれどそれは学校と言う狭い世界での話。世間に出れば、真雪の知っていることなど大して役に立たない。
全く、役に立たない。
「跨ぐぞ」
ベッドが沈んで、窓際に移動したアルが冷たい空気と一緒に布団に入ってくる。
真雪は小さく身震いすると、アルに体をすり寄せた。
「暖かいな…」
寒さを凌ぐように体に巻きついてきた腕が妖しく蠢いて、手がパジャマの中に滑り込んでくる。
「…つめた」
不快そうに唸りながらも、それを受け入れた。
節くればった手が優しく背中を撫でている。その冷たい感触と頼りない抱擁に、ゾクゾクと全身が粟立つ。
真雪は穏やかな歓びを味わうようにそっと目を瞑った。