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ホンモノはいらない
第3章 始まりの雨
コンピュータに情報を打ち込んで、その時になって初めて夕方であることに気づく。
あ……っ
心の中で呟いて顔を上げた。
街はいつの間にか街灯がともり、夜の顔を覗かせている。
雨は、降っていなかった。
心細そうに外を見つめる彼女の姿もない。
それでも慎一郎は、ぼんやりとエントランスを眺める。
彼女の透明感のある後ろ姿を、傘を受け取った時に見せてくれた柔らかい笑顔を思い出しながら。
カウンター業務についている臨時職員の二人が、そんな慎一郎を怪訝そうに見ていることには気づかなかった。
「誰か待ってるんですか?」
一人が痺れを切らして尋ねる。
「い、いや、何で?」
「もしかして、この後デートですか?」
もう一人がそう言って、カウンターにやって来た利用者の対応にあたった。
否定したくても、もうそのタイミングではない。それにムキになるのもおかしい気がして、慎一郎は戸惑い気味にカウンターを離れた。
あ……っ
心の中で呟いて顔を上げた。
街はいつの間にか街灯がともり、夜の顔を覗かせている。
雨は、降っていなかった。
心細そうに外を見つめる彼女の姿もない。
それでも慎一郎は、ぼんやりとエントランスを眺める。
彼女の透明感のある後ろ姿を、傘を受け取った時に見せてくれた柔らかい笑顔を思い出しながら。
カウンター業務についている臨時職員の二人が、そんな慎一郎を怪訝そうに見ていることには気づかなかった。
「誰か待ってるんですか?」
一人が痺れを切らして尋ねる。
「い、いや、何で?」
「もしかして、この後デートですか?」
もう一人がそう言って、カウンターにやって来た利用者の対応にあたった。
否定したくても、もうそのタイミングではない。それにムキになるのもおかしい気がして、慎一郎は戸惑い気味にカウンターを離れた。