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ホンモノはいらない
第3章 始まりの雨
彼女が借りた本は、鍋料理の特集を組んでいる一冊だけだった。
カウンターの隅で利用カード申請書に記入してもらい、コンピュータに情報を打ち込む。その時になって初めて、慎一郎は彼女の名前を知った。
「僕は、川端と言います」
「椎名です。よろしくお願いします」
本と利用カードを手渡しながら名乗り合う二人を、カウンター業務についている臨時職員が不思議そうに見やる。
視界の端でそれを意識しながら手短に会話を済ませた。
仕事を終えると、慎一郎は急ぎ足で図書館を離れた。真雪に連絡を入れ、彼女が待っているファストフードへ急ぐ。
真雪は店の前に佇み、慎一郎を見つけると嬉しそうに顔を綻ばせた。
「お待たせしました。行きましょうか」
傍へ駆け寄る慎一郎に真雪がまた微笑みかける。
心がほのかに温まり、慎一郎も微笑んでいた。
急激に親しくなっていく状況に当惑もしているが、ただ単純に嬉しい。抑えても抑えても頬に浮かぶ喜びを隠すことは出来なかった。
カウンターの隅で利用カード申請書に記入してもらい、コンピュータに情報を打ち込む。その時になって初めて、慎一郎は彼女の名前を知った。
「僕は、川端と言います」
「椎名です。よろしくお願いします」
本と利用カードを手渡しながら名乗り合う二人を、カウンター業務についている臨時職員が不思議そうに見やる。
視界の端でそれを意識しながら手短に会話を済ませた。
仕事を終えると、慎一郎は急ぎ足で図書館を離れた。真雪に連絡を入れ、彼女が待っているファストフードへ急ぐ。
真雪は店の前に佇み、慎一郎を見つけると嬉しそうに顔を綻ばせた。
「お待たせしました。行きましょうか」
傍へ駆け寄る慎一郎に真雪がまた微笑みかける。
心がほのかに温まり、慎一郎も微笑んでいた。
急激に親しくなっていく状況に当惑もしているが、ただ単純に嬉しい。抑えても抑えても頬に浮かぶ喜びを隠すことは出来なかった。