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ホンモノはいらない
第4章 深夜のレッスン
まるで真雪の恋人がそこから現れると信じているかのように、自然と足が一歩後ろに下がっていた。振り返った真雪が、不思議そうに首を傾げる。
「彼なんて、いませんよ?」
「……そう、なの?」
料理本の背表紙を飾っていた“男が食べたい”の文字が脳裏を過ぎる。
片想い、かな?
だとしたら、僕にもまだチャンスはあるだろうか。
……チャンス?
苦笑し、また首を振る。
照明が点いて、狭く質素な室内を心許なく照らす。
女性特有の華やかで可愛らしい部屋を想像していた慎一郎は驚いて、思わずまじまじと覗き込んだ。
痛々しいほどに殺風景な部屋だった。
四畳半の台所には、傷だらけのウッドラックが一架だけ。
そこに電子レンジも炊飯器も全て詰め込まれている。二客ずつの数少ない食器も肩身狭く並べてあった。
奥の六畳の部屋には、シングルベッドとローテーブル。それから電気ストーブらしきもの。
他に、何もない。
「彼なんて、いませんよ?」
「……そう、なの?」
料理本の背表紙を飾っていた“男が食べたい”の文字が脳裏を過ぎる。
片想い、かな?
だとしたら、僕にもまだチャンスはあるだろうか。
……チャンス?
苦笑し、また首を振る。
照明が点いて、狭く質素な室内を心許なく照らす。
女性特有の華やかで可愛らしい部屋を想像していた慎一郎は驚いて、思わずまじまじと覗き込んだ。
痛々しいほどに殺風景な部屋だった。
四畳半の台所には、傷だらけのウッドラックが一架だけ。
そこに電子レンジも炊飯器も全て詰め込まれている。二客ずつの数少ない食器も肩身狭く並べてあった。
奥の六畳の部屋には、シングルベッドとローテーブル。それから電気ストーブらしきもの。
他に、何もない。