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ホンモノはいらない
第4章 深夜のレッスン
―――告白したら、いいのに。

アルが職場の先輩に恋心を抱いていると気づいてすぐに、真雪は冗談半分にそうアドバイスしたことがあった。

―――そんなに素敵な人なら、すぐに彼氏出来ちゃうよ。

―――そうかもな。けど、告白出来ないよ。

―――どうして?

―――出来の悪い弟くらいにしか思われないから、困らせるだけだよ。それに……、

言い淀むアルは、何かに怯えているようにも見えた。その理由が想像出来るから、真雪もそれ以上は何も言えなかった。なんて言えば良いのか分からなかった。


今も、やっぱり分からない。

真雪はアルの腕を強引に外して向き直ると、少し背伸びをして唇に触れるだけのキスをする。

「慰めてくれんの?」

にっこりと微笑む真雪をアルがきつく抱き込む。激しい情動の戦慄きが真雪をも震わせる。
真雪はアルの腰に手を添えて、涙に滲む視界をゆっくりと閉じた。
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