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ホンモノはいらない
第4章 深夜のレッスン
その夜、夢の中で真雪は高校生に戻っていた。
懐かしく、どこかかしこまった教室の隅には、つまらなさそうに窓の外を見やっている"長瀬君"の姿もある。

彼は勉強もスポーツもそれなりに出来た。けれど、何か秀でたものを持っているわけではなかった。
その代わり…と言うのも変だけれど、問題を起こすようなこともしない。感情を荒げることもなく、自分の意見を通すこともない。
真面目で優しくて穏やかな人だと、誰もが信じていた。

少し冷たいところもあったけれど、それが良いのだと秘かに人気もあった。
端正な顔立ちと彼が持つ独特の雰囲気が、女子にとって堪らなく良かったのだろう。


真雪には彼が、何に対しても関心のない人に見えた。
だからこそ彼の傍は心地良く離れがたかった。


視線を感じたのか"長瀬君"が振り返り、真雪のほうをじっと見る。


―――変なヤツ


笑っているような、泣いているような声だった。

逆光で表情はよく見えなかった。





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