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ホンモノはいらない
第5章 大切な想い
「あいつなら、まだ帰ってないぞ」
そう言って、アルが横をすり抜けていく。
牽制された気がして慎一郎は俯いた。真雪への想いを見透かされているのだと思うと、アルの顔を見ることが出来ない。
真雪を奪えるとは露ほども思っていない。
そんな見苦しいことはしたくないし、出来ない。
だから、
ここでアルに会えて良かったのだ。
唇を噛み締めて別れの言葉を口ごもり、慎一郎は今度こそ帰ろうとした。
「来いよ」
「えっ?」
言われた言葉を理解出来ないまま背後を見ると、アルも振り返って慎一郎を見つめていた。
「真雪に用があるんだろ」
来るな、とはっきり拒絶した不機嫌な声。そのくせ慎一郎が“来る”以外の選択をするはずがないと決めつけた態度。
慎一郎は面喰らい、どうすれば良いのか分からないまま頷いた。
冷たい視線を寄越して再び歩き始めるアルの後ろを歩きながら、こっそりと溜め息をつく。
簡単に流されてしまう意思の弱い自分が情けなかった。
そう言って、アルが横をすり抜けていく。
牽制された気がして慎一郎は俯いた。真雪への想いを見透かされているのだと思うと、アルの顔を見ることが出来ない。
真雪を奪えるとは露ほども思っていない。
そんな見苦しいことはしたくないし、出来ない。
だから、
ここでアルに会えて良かったのだ。
唇を噛み締めて別れの言葉を口ごもり、慎一郎は今度こそ帰ろうとした。
「来いよ」
「えっ?」
言われた言葉を理解出来ないまま背後を見ると、アルも振り返って慎一郎を見つめていた。
「真雪に用があるんだろ」
来るな、とはっきり拒絶した不機嫌な声。そのくせ慎一郎が“来る”以外の選択をするはずがないと決めつけた態度。
慎一郎は面喰らい、どうすれば良いのか分からないまま頷いた。
冷たい視線を寄越して再び歩き始めるアルの後ろを歩きながら、こっそりと溜め息をつく。
簡単に流されてしまう意思の弱い自分が情けなかった。