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ホンモノはいらない
第5章 大切な想い
部屋で待つのだと思っていた慎一郎は、アパート前の駐車場へ向かい古い軽自動車に乗り込んだアルに戸惑った。
「どこへ…?」
躊躇いがちに尋ねる慎一郎を、アルは怪訝そうに見やる。
「真雪んとこに決まってるだろ」
そう言って、車のエンジンをかける。
話の流れからして、確かにそうなのだろう。
……で、どこへ?
慎一郎の無言の問いかけに、アルが答えてくれるはずはない。
助手席に座った慎一郎がシートベルトを引っ張り出していると、車はエンジンを唸らせて動き始めた。
「……嫌じゃ、ないんですか?」
「何が?」
「その…、椎名さんが僕と会っても良いのかと、」
前を向いたままアルが微かに目を細める。重い溜め息が耳まで届いてきて、慎一郎はこっそりと体を強張らせた。
車は細い路地を抜けて、歩道のない侘しい県道を走る。唸り声をあげるエンジンの振動が体に響く。
「…傘、貸したのあんただろ?」
不意にアルが独り言のように呟いた。
「どこへ…?」
躊躇いがちに尋ねる慎一郎を、アルは怪訝そうに見やる。
「真雪んとこに決まってるだろ」
そう言って、車のエンジンをかける。
話の流れからして、確かにそうなのだろう。
……で、どこへ?
慎一郎の無言の問いかけに、アルが答えてくれるはずはない。
助手席に座った慎一郎がシートベルトを引っ張り出していると、車はエンジンを唸らせて動き始めた。
「……嫌じゃ、ないんですか?」
「何が?」
「その…、椎名さんが僕と会っても良いのかと、」
前を向いたままアルが微かに目を細める。重い溜め息が耳まで届いてきて、慎一郎はこっそりと体を強張らせた。
車は細い路地を抜けて、歩道のない侘しい県道を走る。唸り声をあげるエンジンの振動が体に響く。
「…傘、貸したのあんただろ?」
不意にアルが独り言のように呟いた。