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ホンモノはいらない
第5章 大切な想い
「えっ?…あぁ」
「真雪はあんたの傘をさして帰ってきたんだ」
聞き逃しかけた慎一郎が慌てて返事をすると、アルはそれで説明は足りたとばかりにまた口を閉ざしてしまった。
大通りへとハンドルを切り、またアクセルを噴かす。緩い上り坂にエンジンは悲鳴をあげ、車内がガタガタと揺れる。
天命を暗示しているような兆候に慎一郎は恐る恐ると足を踏ん張り、掴まっても安全そうな場所を探した。
「つ、付き合いは長いの?」
なんでも良いから気を紛らわしたくて、脳裏に浮かんだ言葉を口に出す。
本当に聞きたいのは、それではない。
しかし、構わなかった。
一瞬でもこの不安を忘れさせてくれるのなら。
「何が?」
少し前にも聞いたようなセリフをアルが返してくる。
「椎名さんと、」
「高三からだから、八年?九年?…それくらい」
「そうなんだ…っ、」
途切れてしまった会話に心の中で涙を流し、慎一郎はシートベルトを強く握った。
「真雪はあんたの傘をさして帰ってきたんだ」
聞き逃しかけた慎一郎が慌てて返事をすると、アルはそれで説明は足りたとばかりにまた口を閉ざしてしまった。
大通りへとハンドルを切り、またアクセルを噴かす。緩い上り坂にエンジンは悲鳴をあげ、車内がガタガタと揺れる。
天命を暗示しているような兆候に慎一郎は恐る恐ると足を踏ん張り、掴まっても安全そうな場所を探した。
「つ、付き合いは長いの?」
なんでも良いから気を紛らわしたくて、脳裏に浮かんだ言葉を口に出す。
本当に聞きたいのは、それではない。
しかし、構わなかった。
一瞬でもこの不安を忘れさせてくれるのなら。
「何が?」
少し前にも聞いたようなセリフをアルが返してくる。
「椎名さんと、」
「高三からだから、八年?九年?…それくらい」
「そうなんだ…っ、」
途切れてしまった会話に心の中で涙を流し、慎一郎はシートベルトを強く握った。