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ホンモノはいらない
第5章 大切な想い
住宅と商業施設が混雑した町並みの一角にあるコインパーキングに入ると、車はピタリと静かになった。
数十分に及んだエンジン音が耳鳴りのように頭の中で反響しているが慎一郎はほっと胸を撫で下ろす。
エンジンが堪えかねてどうにかなってしまうのではないか…。
不安と恐怖を感じながら車に乗ったのは初めてだった。
アルは車から離れると、足早に歩いていく。
国道から響いてくる車やバイクの音に混じって、近くを走っているらしい電車のノイズが冷え込んだ空気を引き裂こうと叫ぶ。
ざわめきに満ちた住宅街はけれど静まり返り、どこかよそよそしかった。
雑居ビルに挟まれた細い倉庫のような建物の前で、アルは刹那足を止めて慎一郎を一瞥した。
建物はトタン板に覆われ、一部にストリートアートを思わせる落書きがしてある以外さして特徴はない。
注意深く歩いていても簡単に見落としてしまいしそうな建物だ。
しかしその印象は、磨りガラスの入ったアルミ製のドアを開けた途端、一変する。
数十分に及んだエンジン音が耳鳴りのように頭の中で反響しているが慎一郎はほっと胸を撫で下ろす。
エンジンが堪えかねてどうにかなってしまうのではないか…。
不安と恐怖を感じながら車に乗ったのは初めてだった。
アルは車から離れると、足早に歩いていく。
国道から響いてくる車やバイクの音に混じって、近くを走っているらしい電車のノイズが冷え込んだ空気を引き裂こうと叫ぶ。
ざわめきに満ちた住宅街はけれど静まり返り、どこかよそよそしかった。
雑居ビルに挟まれた細い倉庫のような建物の前で、アルは刹那足を止めて慎一郎を一瞥した。
建物はトタン板に覆われ、一部にストリートアートを思わせる落書きがしてある以外さして特徴はない。
注意深く歩いていても簡単に見落としてしまいしそうな建物だ。
しかしその印象は、磨りガラスの入ったアルミ製のドアを開けた途端、一変する。