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ただ犯されたいの
第17章 【愛欲と支配の果てに……】
誰もが心の奥底に秘めているでしょう…?
どうしようもなく渦巻く愛と性の歪みはどんな相手でも、一瞬の魔が差せばたちまち引きずり込まれて身動き出来なくなる。
気が付けばもう、引き返せないところまで来ているものなのです。
風情ある風鈴の音。
縁側でスイカを食べながら暑い夏を過ごしている。
橘 成美、45歳。
公務員の同い年の夫との間に娘が一人。
高校一年生になったばかり。
3年前から主人の実家であるこの家に家族で越してきた。
以前は何かと便利な都会に住んでいたのですが、義理の両親が揃って介護が必要となり、長男である主人が面倒を見るべく田舎に戻ってきた。
娘も最初は嫌がっていたが何とか説得し、私は義理両親の介護につきっきりとなっていた。
その義理父が他界してその翌年に続けて義理母も息を引き取った。
入院生活が長かったので苦にはならなかったがやはり立て続けに居なくなると寂しいものだ。
お葬式には親交の深い方々に見送られ私の役目も一段落が着いた頃。
街の商店街で偶然にもお葬式に参列頂いた片桐善栄さんとお会いした。
少しだけ白髪交じりのおじさまといった感じだろうか。
おそらく歳はかなり上なはず。
確か70代半ばあたりだったような。
義理父とは学生時代からの仲だったようで、今は書道や生け花教室の師範をされていらっしゃるとか。
主人も習っていたみたいです。
「アレ以来かな、ご無沙汰しておった」
「はい、ご無沙汰しております」
「はて、この街にこんな美人がおっただろうかと思ったら橘のとこの長男の嫁じゃったわ」
私の中で厳格な寡黙な方だと勝手に存じ上げていたのでまさかこんなフランクな方だとは想像も出来ず、一瞬、呆気にとられた。
謙遜に愛想笑いするしかない。
「お茶でもどうじゃ」
断るなんて滅相もありません。
この方はとても有名な師範代でございます。
何処かのお店に入るのかと思いきや、まさかの自宅兼生け花教室に招き入れられました。
前を車で通った事は何度かありますが、他の住宅とは桁違いの敷地面積です。
お付きの方がすぐに迎えに出てきて奥の座敷部屋へと通されました。
お付き人の方と申しましたけれども、息子さんだと伺っています。